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三陽商会の決算から学ぶ財務分析入門 ①基礎と貸借対照表分析

 三陽商会って会社をご存知でしょうか。1943年創業の総合アパレルメーカーです。ブラックレーベルクレストブリッジ(元バーバリーブラックレーベル)やマッキントッシュロンドン、LOVELESSなどがメンズの主力ブランドです。

 この度三陽商会の2016年度決算が発表され、こんなニュースが報道されています。

toyokeizai.net

 要約すると、バーバリーがなくなって赤字でヤバいよ!ヤバいよ!ということが書かれています。

 さて、三陽商会はどれほどヤバい状況なのでしょうかね、ということを三陽商会財務を分析することで学んでいきましょう。ちなみに僕はMBAを持っていたりするので割とこんなことも得意だったりするんですよ!

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財務分析についての基礎的な知識

財務分析とは

 財務分析とは、財務諸表を分析することです。当たり前ですね。財務諸表とは、一般的に貸借対照表②損益計算書③株主資本等変動計算書キャッシュフロー計算書⑤その他付属明細書のことを指します。今回は中心的なものである①貸借対照表と②損益計算書の分析を行うことにしましょう。

財務分析の目的と方法

 財務分析はその企業の「収益性」と「安全性」を測定することが一番の目的になります。簡単に言えば、金を稼いでいるか(収益性)、潰れないか(安全性)が大事なわけです。また、「収益性」は損益計算書から、「安全性」は貸借対照表から分析します。

 そもそも財務諸表には、例えば流動資産とか、資本とか、売上とか、当期純利益とかのいろいろな数字が並んでいます。もちろんその数字自体にも意味がありますが、その数字がいいのか悪いのかはほかの数字と比較、分析することでより適切な解釈をすることができます。

 そしてほかのどの数字と比較するかというが、財務分析の方法になります。これは大きく3つあります。1つ目は理論値、目標値との比較、2つ目は過去の数字との比較、3つ目は同業他社との比較です。これはのちのち説明します。

それでは三陽商会の財務諸表をみてみましょう

貸借対照表の分析

 まずは貸借対照表です。

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 これはサマリーなので割とざっくりした貸借対照表ですね。

 貸借対照表からは「安全性」を分析するといいました。企業が倒産する典型パターンは借金を返せず、債務不履行に陥ることです。安全性とは、この債務不履行にならないかどうかを分析することです。そのための代表的な指標は「流動比率」と「固定長期適合率」と「自己資本比率」です。

流動比率

 流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

 であらわれる比率です。短期的な支払い能力を示す指標です。

 ざっくり説明します。流動比率とは1年以内に返済しないといけない負債(流動負債)に対して、1年以内に現金化して返済に回すことのできる資産流動資産)がどれだけあるかの割合を示します。これは目標値と比較することができます。一般的には200%が目標値であり、100%を切るとやばいです。100%を切るということは、流動資産<流動負債ということですからね。自転車操業です。

 では実際に三陽商会の数字を計算してみましょう。

 43558 ÷ 16940 = 2.571....つまり257%です。

 これは目標値を超えています。つまり短期的な資金のショートは起こらないだろうと推測できます。

 ちなみに前年度は

 56351 ÷ 21457 = 2.626....ですので262%でした。

 前年に比べると今年は悪化しています。流動負債の減少以上に流動資産(その中でも現預金)の減少が大きいですね。

固定長期適合率

 固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債

 であらわされる比率です。

 流動比率は短期的な支払い能力についての分析でした。固定長期適合率長期的な観点での資金繰りを分析する指標です。

 ざっくり言うと、固定資産返済までの期間が長い資金自己資本固定負債)によって取得されるべきでというのが前提としてあります。固定資産はすぐに現金化することができません。このような資産は、長期的な借金などにより取得されなければ、いざという時に困るよ、ということです。この指標は100%を下回る必要があります。

 それでは計算してみます。

 37206 ÷ (14272 + 49551) = 0.58..... =58%です。どうやら長期的にも安全そうです。

自己資本比率

 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本

 であらわされる比率です。

 これは資金調達方法の全体的なバランスをみる指標です。

 会社の資本(総資本)のうち返済がいらない自己資本の割合はどれくらいかを示しています。自己資本に対するのは他人資本ですが、他人資本とは借金です。他人資本が多いということ(=自己資本が少ないということ)は他人の影響を受けやすく、不安定な経営であるといえます。これは70%を超えると優秀、40%が最低ラインです。

 それでは計算してみます。

 49551 ÷ 80764 = 0.61...  61%なのでまずまずのバランスでしょうかね。

 

今回のまとめ

 財務分析は「収益性」と「安全性」を調べるために行います。

 貸借対照表から「安全性」(=潰れないかどうか)を分析することができます。

 貸借対照表分析では「流動比率」、「固定長期適合率」、「自己資本比率」を分析します。

 流動比率では短期的な資金繰りを、固定長期適合率では長期的な資金繰りを、自己資本比率では、資金繰りの全体的なバランスを分析します。

 三陽商会は赤字とは言え少なくても数年は倒産しなさそう

 

 次回は損益計算書の分析です。お楽しみに!